聖籠35
Seirou 35
新潟県聖籠町・農村集落にたつ平屋の建替である。
古くから築いた農の文化。集落の心底に潜む記憶のネットワークに興味を抱き、観察、分析、イノベーションというフローを実践している。
地元の木々を生かす
山北地方の杉材を活用し、コストを考慮したシンプルな構造フレームの表しを提案している。且つ、構造材に限らず、羽柄材と外壁材の全てに県産杉を活用し、身近なファブリケーションにより価値のある場を形成している。
構造スケルトンのシークエンスとして、新潟杉の活用法を考慮している。3.5寸角の新潟県産杉材を表し、構造材は3.5角材ですべてを賄うこと、かつ羽柄材も3.5寸ベースの県産杉材を利活用している。新潟の杉を材木屋から調達し、大工の技術を信頼し、工業的なプレカット工場を介さず、大工の巧みな刻みにより軸組を構築している。近場の杉林、杉材加工、杉を組む大工たち。本来農村にあったであろう身近なファブリケーションによる住まいの構築である。
新潟県産杉105角使用部位;柱、間柱、土台、大引、梁、桁、登り梁
新潟県産杉30×105使用部位;間柱、垂木
また集落の心底に潜む記憶のネットワークの形づくりを、じっくりと発見、踏襲、表出することに執着した。興味深い事は、玄関を南へ凸に張り出し手前から奥への掛け渡しの間がある。建替に際し、集落内の連鎖空間でもある南玄関=社交空間を解体せず、アプローチ動線へ転用することとした。挨拶を交わしこうべを垂れる空間が継続される。
玄関の屋根は、鬼瓦を含め希少な安田瓦を旧家屋から移設し再度葺き替えている。更に古えの木加工、大工の技術を露わにし、スケルトン化した4寸角の杉柱立ちを縫うように新居へ繋がる計画とした。
最小限のもので構成された「足らぬもの」ではあるが、ごくごく身近に存在する「魅力的な事柄」に虫眼鏡をあてて紡ぐことによって生まれた住まいである。
\第30回建築作品・新潟県賞 優秀賞 受賞/
竣工 : 2020年6月
所在地 : 聖籠町
用途 : 住宅
構造規模 : 木造
建築面積 : 83.69㎡
床面積 : 82.88㎡
写真 : 松崎典樹 NON SUCH photography
completion : 2020.06
location : Seirou-Machi
program : house
structure : Wood
building area : 83.69㎡
total floor area : 82.88㎡
Tetsuya Tanaka
Tetsuya Tanaka structure design office
builder -Nakamura Construction
photo : Noriki Matsuzaki NON SUCH photography