新潟市のシモマチに建つ稲荷町の家。コンクリートによる1Fの基礎基壇とグリッド構成のプランによる2階の住環境とで成立する複合住宅である。1階は駐車を兼ねたオープンスペースであり、2階が主な生活空間になる。 ２階には四畳半を3×4＝12マス並べている。中央の4マスは自由の場であり、畳廊下として仕立てている。 畳の間は様々な生活風景を許容する多用途な空間である。家族の日常生活とは別に、友人との宴会、誕生会、ママ友会、子供たちみんなで宿題、工作会、みんなを呼んで誕生会・・・など非日常を瞬間に楽しむ場でもある。日常生活を織り成す居心地の良い家族空間であると同時に、人々の営みや風情を反映する町の一部のようでもある。 中央の４マス（四畳半×４）の畳廊下を介して、それぞれ左右の空間へ渡る。中央の畳廊下には座卓を据え、これを中心に生活動線が確保される。住空間において限定された機能空間はあまりなく、水廻り程度に抑えている。畳廊下と左右の間とを両方に渡って生活動線が生まれ、機能を限定しない曖昧な生活領域が住まいに宿っている。天井には木曽さわら、床に能登ひば、壁に秋田スギ、構造材・建具・仕上げ材に新潟のスギを使用している。旧家屋の解体時のアカマツの梁を柱に転用している。畳は熊本のイグサを使い、外壁は岐阜の土のタイルである。
畳を中心とした日常と非日常の風景、身近な場所の素材による構築、生活と建築。本来の建物づくりに精通する普遍性を実践した。